あや相談室について

成人式

実家の両親の寝室には何十冊ものアルバムが並べてある。横にあるベッドに座って、それら過去の自分を見る。

ビッグな乳児期、天真爛漫な幼児期、食欲旺盛な思春期、拒食症でガリガリだった高校時代、過食でデブデブだった短大時代、なんとか自立しようといろいろやってみては失敗してきた20代・・・どの写真を見ても私の顔は笑っている。でもそんな自分を見るたびに、その笑顔に裏に隠された、寂しくて苦しくて悲しくてたまらなかった当時の自分を思い出す。

中でも成人式の時に撮った写真はビリビリに破って捨てたいくらいだった。泣きたいほど辛いのに、無理して笑っている自分の顔があまりにも惨めだからだ。

「成人式、どうする?」母に聞かれた。
「いかない!いけないに決まってるでしょ!」

当時の私は体重が70キロ以上あって、顔も体もパンパンだった。こんなに太ってしまった私を見たら、みんな、どんな顔をすんだろう・・・

でも成人式が近づくにつれ、やっぱり出席しようかなと思うようになった。その理由は1つ。最近ちょっと調子が良くて過食をしていなかったからだ。だからといって痩せたわけではなかったが、調子が良いので気分もいい。気分が良い時は、他人と自分をあまり比較しないでいられるので「今の私なら出席してもいいかな~♪」と思えてしまったのだ。

「え!もう着物残ってないかもよ!」と焦る母と一緒に急いで
デパートの貸し衣装屋へ行った。
「これがいいわよ!若々しくて!」と母が選んだ着物は30万円もするとてもきれいな着物だった。店員にもおだてられ、私はその着物を借りることにした。1日で30万円なんて馬鹿みたい!
そう思いつつも、赤いその着物を見ながら、なんだか成人式が楽しみになってきた。

成人式当日、私は朝早くに起きて近所の美容院に出かけた。ここで着付けとメイクと髪をセットしてもらうのだ。
美容院には同じく今日成人式を迎える子たちが何人か来ていた。みんな、細くてとってもきれい。どの子も、メイクをしていく程、髪をセットしていく程、着物を着ていく程、もっともっときれいになっていった。
横目で彼女たちの変身ぶりに感心・感動しながら、私は自分の顔や姿も目の前の鏡で見てみた。
「・・・・」
なんてひどい格好なんだろう。これじゃまるでトドだ!!
美容院を飛び出して家に帰ってしまいたい心境だった。
どんなにきれいな着物を着ても、どんなにきれいにメイクをしてもらっても、どんなにステキな髪飾りをつけても、私は私。
ブスでデブで今にも泣きそうなトド!

ただでさえでかくて目立つのに!今日の私はもっと目立つ!
すれ違う人と必ず目が合う。でもみんな、すぐに目をそらす。
苦笑いをしている人もいる。
私は走って家に帰った。
家に着くと、待っていました!とばかりに家族が玄関口に出て来て言った。「わ~!きれいだね。馬子にも衣装だね(笑)」

おいおい、あなたたちは一体私のどこを見てそんなことを言っているの?外に出て、他の子たちを見てきてご覧よ。そしたら私がどんなに滑稽な姿をしているかが分かるから。それともそんなことは百も承知で、かわいそうな私を慰める為にお世辞を言っているの?

成人式は、我が家の目の前にある文化会館で行われた。
だから一歩外に出れば、みんながそこにいた。
「おっ・・・ひ、久しぶり・・・」「あれ!?なんか太った?」私がみんなから言われた言葉はこの2つしかなかった。
太ったのは本当のことだから仕方がない。でもこの言葉の後に
会話が全く続かないのだ。誰と会ってもお互いににっこり笑うだけで、その後の会話がない。
私が親友だと思っていた友達も、他の子たちと楽しそうに話している。

なんで成人式に参加しようなんて思ってしまったんだろう・・・(涙)。

輪になって盛り上がっているみんなの側で、私は一人ぽつんと立っていた。そのとき、会場の隅にもう一人、ぽつんと突っ立っている人がいることに気がついた。
Oさんだ!
Oさんは小さい頃から太っていて内向的でいつも下を向いていた。だからなかなか友達ができなかった。
彼女は相変わらず太っていた。
と、私は彼女と目が合った。Oさんは私の方へ近寄って来た。
私は心の中で叫んだ。
「やだっ!こっちに来ないで!あなたと仲良く話していたら、あなたと同類だと思われてしまうじゃない!」
そんな私の思いが通じたのか彼女は軽く会釈をしただけで私の前を通り過ぎていった。

なんて最低な奴だ。自分だって太っているくせに。
それなのに、太っている人たちを見ると「私はあなたたちとは違う!」「私は太りたくて太っているわけじゃないのよ!」と叫びたくなる。
Oさんだって他の太った人たちだって、みんな好きで太っているわけではないだろうに。私と同じようにいろんなことに傷つき、苦しんでいるだろうに。

成人式は今でも「出なきゃ良かった」と思う。
でももし式に出なかったら、それはそれで後で「出たかったのに出られなかった・・・」と言って悔やんだのかもしれないね。

成人式に出たことを後悔したのは、自分の外見が醜いことを
嫌と言うほど感じてしまったからではない。
自分には友達が一人もいない。小さい頃からずーっとずーっと。そんな悲しい過去(現実)をふいに思い出してしまったからだ。
もし成人式で久しぶりに会えた友達と楽しく話せ、懐かしい話で盛り上がることができていたら、きっと私は「やっぱり行って良かった!」と思っただろう。

でもこの日を機に悩みが1つ減った。
「同窓会に行きたくても、こんな私じゃ行けない!」「昔の友達に会いたくても、こんな私じゃ会えない!」と悩んだり泣くことが一切なくなったのだ。このお陰で私は精神的にかなり楽になれた。
そしてこの考え方を徐々に他の「したくてもできない!」にも応用していけるようになっていった。
「どうしてもしたいのに、それが今の自分ではどうしてもできないならば、それは今の私には必要がないってことなんだ!」ってね。

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